attributes
)あるいは属性の水準(levels
)が、当該対象を選択する際にどの程度考慮されるのかを統計的に明らかにする方法従来の政策選好を明らかにする一般的な方法 = 意識調査
いくつかの政策や争点項目を多数の回答者に提示
それぞれについての賛否などを尋ねる
実例):「JESⅢ調査」の質問
リード:
集団的自衛権の問題として、次のA、Bのような意見があります
質問文:
A:日米安保体制を強化するためには、集団的自衛権の行使を認めるべきである
B:国際紛争に巻き込まれることになるので、集団的自衛権の行使を認めるべきではない
Q1:あなたの意見はどちらに近いですか
選択肢: 賛否が
1:Aに近い
2:どちらかといえばA
3:どちらかといえばB
4:Bに近い
Q2:集団的自衛権の問題はあなたにとってどのくらい重要ですか
選択肢: 重要性は
1:かなり重要である
2:やや重要である
3:あまり重要ではない
4:ほとんど重要ではない
このような従来の方法に代替する手法
Hainmueller et al. (2014)が考案
一般的にマーケティング領域のコンジョイント分析を洗練させたもの
様々な属性がもつ水準のうち、最も人びとに好まれる水準の組み合わせを統計的に分析する
選好の「構成要素」= 属性
構成要素の「変数値」= 水準
衆院選挙で 2 つの政党からどちらかに投票する場合を考える
ここで考慮する政策(=属性)は次の 3 つだとする
注意点:属性と水準の数が多すぎると多くのプロファイルを作成しなければならない
→ 推定結果の妥当性が減じられる可能性あり
→ 要因や水準を減らす方向で調整する必要がある(君山2010)
AMCE
についても線形回帰
(OLS
) で推定するOLS
では「係数値」に該当仮想シナリオを用いたフレーム実験: (秦
2015)
→ 一つの処置群には一つの刺激のみが含まれる
→ もし刺激が 2 種類あり、各刺激に 2 つのバリエーションがある場合
→ 4 つの実験群が必要
1 つの群のサンプルサイズが小さすぎると
→ 平均因果効果を十分な精度で推定できない
→ フレーム実験は少数の独立変数の固定効果しか推定できない
分析者が1つないし少数の変数の平均因果効果のみを検証したい場合
→ フレーム実験は有効な方法
コンジョイント実験 → 複数の変数の平均因果効果を推定可能
回答者を複数の群に分割するのではなく、プロファイル内容を無作為化
同時に複数の水準の効果を推定 → 各水準の影響力の相対的な比較も可能
例えば、ある特定の政策パッケージが最も好まれる、あるいは好まれない点からどの程度離れているのかわかる
SDB: Social Desirability Bias
SDB
を招きかねない刺激に回答者が敏感に反応しうるSDB
ゆえに効果がないのか特定できない参考:
コンジョイント実験に近似した分析方法
複数の属性から構成される 1 つの「物語
(vignettes
)」を回答者に提示
それに対する評価を繰り返しおこなってもらう
→ 物語に含まれる属性等の効果を推定する方法
1 つの物語を繰り返し提示するより、2 つのプロファイルのうち好ましい方を選択してもらうコンジョイント実験の方が、より実態に適合的な推定結果を得られる
属性 | 水準(構成要素の変数値) | 支持政党名 |
---|---|---|
消費再増税 | ①中止・税率引き下げ | 共産・社民 |
②当面は延期するが、一定の改革実現後速やかに実施 | 未来 | |
③期限を決めずに延期 | 民主・維新・生活 | |
④2017年4月に10%にし、軽減税率を導入 | 自民・公明 | |
雇用政策 | ①年功序列を撤廃して労働市場の流動化を促す | 維新 |
②多様な働き方を認め、正規・非正規を問わず雇用を拡大 | 自民・公明 | |
③派遣法改正など労働規制緩和に反対。正規雇用を維持 | 民主・生活・共産・社民 | |
金融財政政策 | ①大胆な金融緩和と機動的な財政出動によりデフレ脱却 | 社民・共産・生活 |
②格差拡大をもたらす金融財政政策に反対 | 民主・維新・未来 | |
③過度の金融緩和や円安、公共事業のバラマキを是正 | 自民・公明 | |
成長戦略 | ①農業・医療など岩盤規制を打破 | 自民・公明・維新 |
②雇用政策や子育て支援などによる所得増で消費拡大 | 民主・生活・共産・社民 | |
③地方産業・中小企業の活性化による成長実現 | 公明 | |
原発再稼働 | ①安全基準に合格すれば認める | 自民・公明 |
②責任ある逃避計画など厳しい条件で容認 | 民主・維新 | |
③再稼働を認めない | 共産・生活・社民 | |
TPP | ①参加するが自由化には慎重 | 生活・社民・共産 |
②TPPへの参加反対 | 自民・公明・民主 | |
③参加して積極的に自由化を推進 | 維新・未来 | |
集団的自衛権 | ①閣議決定のみに基づく行使の容認には反対 | 自民・公明・未来 |
②行使を認めない | 社民・共産 | |
③行使を容認し、関連法を整備 | 民主・維新・生活 | |
憲法改正 | ①憲法改正に賛成。国民の手による新しい憲法を制定 | 自民・民主・維新・未来 |
②現行憲法の基本原理を維持した上で必要な条文を追加 | 公明・生 | |
③現行憲法条文のいかなる変更にも反対。平和憲法を守る | 共産・社民 | |
議員定数削減 | ①選挙制度調査会の答申を尊重し、よりよい選挙制度改革に取り組む | 自民・公明 |
②議員定数を大幅に削減する | 民主・未来・生活 | |
③議員定数削減を実現する | 維新 | |
④比例区の定数削減には反対 | 社民・共産 | |
Source: Horiuchi, Yusaku; Smith, Daniel M.; Yamamoto, Teppei,
“Measuring Voters’ Multidimensional Policy Preferences with Conjoint
Analysis:
Application to Japan’s 2014 Election”, Political Analysis
(2018), vol.26:201.
省略形 | 政党名(英語) | 政党名(日本語) |
---|---|---|
LDP | Liberal Democratic Party | 自民党 |
Komeito | Komeito | 公明党 |
DPJ | Democratic Party of Japan | 民主党 |
JIP | Japan Innovation Party | 維新の会 |
PFG | Party for Future Generations | 日本未来の党 |
PLP | People’s Life Party | 国民の生活が第一 |
SDP | Social Democratic Party | 社民党 |
JCP | Japan Communist Party | 共産党 |
Figure 1
の左側には各政党の「水準」が政策ごと(=政党ごと)に表示されている
→ 図の「●」が推定された「平均因果効果:
AMCE」
→ その水準(=要素)が平均的にどのくらい選ばれやすいかを示す係数値
図の x 軸には「自民党と比較した時の平均因果効果の差」がパーセンテージポイント (% points) で示されている
自民党の位置は 0
であり横線が付いていない「●」で示されている
自民党が効果の参照ライン (Baseline
)
この Baseline
を基準とする場合の他の「水準」の係数を確認する
「●」の左右に伸びた横軸は 95% 信頼区間
(cluster-robust 95% confidence intervals
)
→ それぞれの結果がどのくらいの誤差を伴っているかがわかる
それぞれの横棒の左限もしくは右限が、実線で示す縦軸上の 0 値とかぶっていなければ、その要素は、ワクチン接種の意向に対して、偶然ではなく「意味がある」(統計的に有意)と解釈できる
解釈の一例:消費税に関して
自公の主張:「⑤2017年4月に10%にし、軽減税率を導入」
→ これが Baseline
DPJ, JIP, PLP の係数が 4.7
→ 自民党の場合と比較すると、DPJ, JIP, PLP
が主張する政策の方が回答者に選択される確率が 4.7% ポイント高い(5
%で統計的に有意)
自公の主張と比べたときに、各政党の主張がもし好まれていれば、その ● は 0 の実線より右側 (+の方向)、逆に拒否されている場合は 0 の実線より左側 (− の方向)に示される
AMCEs
の係数にプラスが多いBaseline
である自民党の政策はそれほど人気がないことを示唆japan2014conjoit
) を使って再現するjapan2014conjoit
は
cjoint パッケージ
に内包されているので、最初にパッケージをロードするjapan2014 <- japan2014conjoint %>%
select(!c(contains("rowpos"))) %>% # "rowpos"という不要な語句を含む変数を削除
select(-c(wgt)) %>% # wgtを削除
select(-c(respondent)) # respondent を削除
[1] "task" "profile"
[3] "selected" "TPP"
[5] "Nuclear power" "Constitutional revision"
[7] "Economic growth strategy" "Consumption tax"
[9] "National assembly seat reduction" "Monetary and fiscal policy"
[11] "Collective self-defense" "Employment"
[13] "respondentIndex"
変数名 | 説明 |
---|---|
task | タスク番号: 1 - 5(1 回のタスクで profile 1 と profile 2 を比較) |
profile | profile 番号: 1 or 2(1 回のタスクで 1 と 2 が同時に提示される) |
selected | 回答者が候補者 (profile 1 or 2) を選ぶ = 1、選ばない = 0 |
Consumption tax | 「消費税」に関する回答 |
Employment | 「雇用」に関する回答 |
Monetary and fiscal policy | 「金融政策」に関する回答 |
Economic growth strategy | 「経済成長」に関する回答 |
Nuclear power | 「原発」に関する回答 |
TPP | 「TPP」に関する回答 |
Collective self-defense | 「集団的安全保障」に関する回答 |
Constitutional revision | 「憲法改正」に関する回答 |
National assembly seat reduction | 「衆議院議員定数」に関する回答 |
respondentIndex | 世論調査会社が回答者に付けた数値 ID: 1-2091 |
respondentindex
を確認すること)responseindex = 1
の回答者がどのような task
をしたかチェックしてみるrespondentindex
の右上にある△をクリックして「1」を表示させるresponseindex = 1
の回答者は1回目の task で profile 1
と profile 2 を提示されresponseindex = 1
の回答者は1回目の task で profile 2
を選んだという意味